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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

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「人間として生まれてきた記念」に何ができるか? 神風動画はアニメーターの地位向上を目指し、業界を変えていくフェーズへ――。

厳しいアニメ業界の当たり前を変えようと戦いつづける水崎さんの考える、働くことの意味とは?

2018/10/31

常識にとらわれず、自分たちが求めるものを実現し続けてきたCGアニメスタジオ、神風動画。初のTVアニメ制作の元請けとして制作を行った深夜アニメ『ポプテピピック』では、常識を覆すパート構成と、斬新なクリエイターの起用で視聴者を釘付けにしました。

後編では、代表である水崎さんの考える会社の未来のことや、神風動画が創ろうとしているアニメ業界についてお話しいただきます。

前編▶普通のことはしない。『AKIRA』から始まった神風動画・水崎淳平が本物のアニメを学び、神風動画を立ち上げるまで。

理想に近づいてきた今こそ、理想論を曲げない。自社の理念に賛同してくれるスタッフを大切に。

――会社を立ち上げてから、自分が思い描いている理想にどれくらい実現できたと感じますか?

「現在スタッフは30人ほど在籍しているのですが、10~20名の規模のときは神風動画のスタッフ一丸となって何かを作るという、一体感がありました。でも規模が大きくなってきたときにそういった一体感や、とにかく“何かが足りない”と思ったこともあって。

それで、『ニンジャバットマン』という長編の劇場アニメを制作してたくさんのスタッフと関わったときに、やっぱりどこかで諦めるのではなく、自分の持っている理念を大切にしようと改めて思ったんです。僕はおもしろい作品をたくさん作りたいと思うけれど、さらに働き方にも同じくらいこだわらないとだめなんだと。人が多くなってくれば、僕のような型破りな人間とは正反対の人も混ざってくると思うんですけど、自分の考え方、理想論に賛同してくれる人が入ってくれるといいのかなと。そうやって入ってきた人ほど、長く神風動画と一緒に働いていてくれていると思います」

過去、自分とは違うタイプのスタッフに戸惑うこともあったようですが、現在は水崎さんの描いた理想のチームワークが発揮できるようになりました。神風動画として年々、個性が強いクリエイターチームになってきたと水崎さんは語ります。

――今、会社として足りないと感じることは何ですか?

「会社っぽいところで言うと、退職金とボーナスかな? と思います。神風動画の中では僕が最年長ですが、僕自身もまだ40半ばですから、退職金ってあまり現実的なイメージがわかないところもあるんです。でも僕がここを辞める頃に退職金が出たら、僕は退職金の第一号として受け取りたいと思っています(笑)。ボーナスは年間の報酬額を決めて、14ヶ月に分割して支払えば、今すぐできない制度ではないんですが、それって支払うべきお金を確保して決まった時期に支払うという、ただの仕組みじゃないですか? それ貯蓄じゃないの? と思ってしまうところもあって(笑)。だから仕事をやって、この案件は1本いくらという中でボーナスを発生させることはないだろうと思います。神風動画としてボーナスを出すのであればロイヤリティに携わる仕事の案件の数が増え、そこで売上が目標を超えたら……など、目標を達成した報酬として出そうと考えています。

ただ実は、ロイヤリティが関わる仕事って『ポプテピピック』が初めてだったんですよ(笑)。神風動画として初めてのTVアニメの元請けの仕事だったので、スタジオ印税のようなものがDVDの売上に応じて入ってくるんですけど、グッズの権利は手放してしまって……。そこは失敗した! と(笑)」

仕事が辛くて辞めたいと思ったことは一度もない。自分がいなくても前に進める組織を作るため何ができるか?

神風動画が法人化してから16年。水崎さんは今まで苦しいから辞めたいと思ったことは一度もないそうです。

――京都で始まった小さな神風動画というチームが法人化し、原宿にオフィスを構えるまでたくさんの苦労もあったと思います。過去、神風動画をやめたいと思ったことはありましたか?

「4年に一回くらいありますね(笑)。体調を崩したときに『そろそろ距離を置くべきでは?』と思いますが、しんどいとか嫌になって辞めたいと感じたことは一度もないですね。ただ、ワンマン経営ではダメだと考えています。スタッフのことを考えると、僕が倒れてどうにかなってしまうような会社は理想ではありません。社内では家族が増えるなど嬉しい報告も増えていますから、突然倒れて現場を去るわけにはいかないですから」

インタビュー中、一緒に話を聞いていた社員の佐竹さんは、水崎さんがいなくても“それらしい”ことはできるけれども、さらに刺さるアイディア、神風動画特有の突拍子もないアイディアは水崎さんからしか出せないと話してくれました。

「今、僕がいなくなると、神風動画は普通のアニメーション会社になると思います。僕は経営者という責任のある立場なので、経営方針という未来のビジョンを描いてそのビジョンを達成しなければなりません。だからごく稀にですが、僕は突然、社員に結構とんでもないことを言うんです(笑)。社員は一時的に振り回されるんですけど、数年経つとその部分が神風動画の個性として定着している。

今はまだ、多くの人の心に残る会社であるためのアイディアは僕にしか出せないと感じます。僕と同じように既存のものを壊すアイディアを出せる人が神風動画に入社してくれたらとも思うのですが……。壊す人ばかりだと僕が仲良くなれないかもしれない(笑)。でもみんなのことを考えたときに、神風動画として個性を発揮しつつ、社員も活きる形ってなんだろう? と考えるんですよね。思いつくことはあるんですが、実現はしばらく先だと思います。僕以外の誰かに任せられる形は、これからも模索していかなければならない課題ですね」

アニメ制作の受注では、企画までを他の代理店などが担当し、作画・アニメ制作のみを会社が行うことも多くあります。しかし神風動画では、企画段階から参加できる作品だけしか引き受けていません。さらに仕事を引き受ける際に「ひとつだけ挑戦させてください」と必ずお願いするそうです。

「ひとつの仕事を1年間かけて作るとして、何も挑戦がないと、そのまま1年だけ会社が保ったねということになってしまいますよね。僕はひとつの作品を作り『これができるようになりました』というものにしたいんです。でも、いくつも欲張るとパンクしちゃうので、そこはひとつ(笑)。

『ポプテピピック』だったらTVアニメのシリーズものという点で挑戦ですし、劇場版『ニンジャバットマン』であれば、長編という点が挑戦なんです」

――仕事を受注するかどうかの判断はどのくらの時間をかけていますか?

「判断は早いです。ただ、ありがたいことに多くの依頼をいただいていて、今はこの先2年くらいスケジュールは埋まっています。以前はオープニング映像やミュージックビデオなど制作期間が2~3ヶ月スパンのものをやってつないできたんですが、最近はシリーズ物や中・長編の作品も制作していて……。お声がけいただいてご一緒したいと思っても、スケジュールの都合でお断りするケースが増えてきています。そこがジレンマになってきていますね。企業さんに『2ヶ月待ってください』とお伺いを立てることはできますが『1年待ってください』ではあまりに長すぎますから……」

神風動画として新しい挑戦をしていく中で、2017年に自主制作映画『COCOLORS』という初の中編アニメ映画を制作しました。きっかけは『COCOLORS』の横嶋監督が神風動画を退社したいと水崎さんに相談したことだったそうです。

――『COCOLORS』制作のきっかけは、横嶋監督が退職を申し出たことだったと伺ったのですが?

「監督である横嶋とは、法人化したときから10年以上、一緒にやってきました。ずっと理想を追いかけてきてくれた仲間なので、『退職するのであれば、やりたいことをやってから辞めてはどうか?』と伝えたところ、『自分の考えたストーリーで中編作品を作りたい』と言ったので『じゃあ、作ろう』と制作を開始したんです。『COCOLORS』を制作したことで心境に変化があったのか、彼はそのまま留まってくれていますが、『もしも他のスタジオでやりたいことがある、あるいは組んでみたい企業があるのなら遠慮なく言ってほしい』と伝えています。ひとりの人間として、彼のやりたいことをやってほしいんです」

――神風動画は離職率が低いと伺っています。

「『自分とマッチする場所を他に見つけたから』という退職理由であれば、僕から無理に止めることはしません。僕自身も昔は転職ばかりしていたので(笑)。いろいろな企業を知りたいという気持ちはあって当然だと思います。ただ、横嶋以外のスタッフにも、人間としてやりたいことをやってほしいと伝えているので、僕から“一緒にやっていこう”と誘って入社したスタッフは、退職せずに長くいてくれる傾向が強いかもしれませんね」

――採用についてはどうでしょうか?

「面接のときは、僕から『この業界で将来どうなりたいですか? どんな夢がありますか?』ということは必ず聞いています。あと、原則として“神風動画で学びたい”というスタンスの方は採用しないようにしていますね。神風動画で経験を積んでステップアップして……という方、実は結構多いんです。でも学校ではないので……(笑)」

面接ではかしこまった形ではなく穏やかに、なるべく緊張感を抱かせないように進めていると話す水崎さん。服装はリクルートスーツなどではなく、私服で来てもらうそうです。

――まさかと思いますが、私服のセンスが悪いと落とされるんですか?(笑)

「それは、絶対にないです!(笑)。だけど、スーツを着ていたら “みんな同じ人”に見えませんか? それが困るんです(笑)。服装からその人がどんな人なのか、その人が持っている雰囲気や個性を知りたいんです。

面接に来てくださる人もいろんな心構えがあると思いますが、入社してくれる方とは長くお付き合いしたいと考えています。その意味では自分たちも同じように心構えが必要なんですよ(笑)。そういった理由から、面接には普段の格好で来てもらっています」

“人間として生まれてきた記念”に何をするか? が決断のポイント。壊して創る神風動画が目指すアニメーターの地位向上

――水崎さんにとって、働くことってどんな風にとらえていますか?

「働いているすべての人に向けて言うなら、まずは、“生き物としてこれでいいのか?”を考えたらどうだろうって思いますね。なんで今、寝たいのに寝られないの? 食べたいものが食べられないの? って。それはルールがあるからとか、そういうものだからっていう意見もあるかもしれません。でも僕は『それでいいの? 生き物として』と思うので、そこを考えてほしいと思います。みんな、もっと本能に近い部分に直結していいと思うんですよ。たくさん食べたいなら、たくさん働く。働きたくないなら、食べる量を減らせばいいと感じます。

僕はよく“人間として生まれてきた記念”っていう表現をするんです。『ニンジャバットマン』の舞台挨拶のオファーをいただいたときも、舞台に上がるなんて恥ずかしいと思うこともあるかもしれないですが、アメリカのキャラクターを使って、日本で好きなようにアニメーション化した作品の監督として発信することは二度とないかもしれない。一度きりの人生で、人間として生まれてきた記念に『こんな貴重な経験は、やらないともったいない!と思ってしまいます」

――決断のキーにもなっているんですね。

「この感覚はすごく大切にしています。例えば『ポプテピピック』で放映したAC部さんの紙芝居も、地上波であれをやるのはどうなの? というところもあったんですが、そこは『人間として生まれてきた記念にどうですか?』って口説きました(笑)。僕がやりたかったんです。地上波で、あの時間帯のアニメをシーズンごとに観ている層の方は、今まで触れる機会の少ないカルチャーだったと思うんですね。でも、観てもらえたら絶対に喜んでもらえると思ったんです」

ポプテピピック © 大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード

――実際、話題になっていましたね。

「『ポプテピピック』ではおもしろいクリエイターさんたちを、地上波という多くの人の目に触れる場所へ持っていきたかったんです。

現状のアニメ業界は実績主義で、ヒット作や有名な作品に関わったという肩書きのないクリエイターは仕事をやらせてもらえないという部分がまだ残っているように感じます。この作品では、『誰なの?』って思われるようなクリエイターが、型破りでみんなを圧倒するモンスターのような作品を作ることができるんだ! っていう実績を作ることができたかなって。これからも、おもしろいクリエイターを多くの人に届けられる作品作りをやっていきたいです」

――では今後、神風動画として達成したい目標はありますか?

「神風動画という枠を超えて、アニメーション業界そのものの地位向上を目指したいと思っています。

過去、『みんなが幸せになる』という目的のためCGをセルアニメのように使い始めました。この手法は一般的になったので、デジタル化の役割は終えたと思います。

でもアニメーターの地位向上は課題として残っているんです。僕はアニメの『AKIRA』に衝撃を受けて、アニメをやりたいと思って上京しました。アニメが好きな若いクリエイターが『アニメーターになる』ということを、今あるブラックなイメージのせいで、親しい人から反対されてしまうことが悲しいんです。そのイメージを変えたい。

神風動画はクリエイターを志した人が、友人や家族から応援されて、『がんばって』と送り出してもらえる会社であろうという理念を大切にしています。だから、このノウハウを他社に拡げる必要があると痛感しています」

神風動画の新しい動きとして、他社がメーカーと直接仕事ができるようコーディネーター的な役割を担うことをはじめていると話します。

「神風動画では、メーカーから直に仕事を請けて制作を行うというスタイルでいくつも仕事をやってきました。アニメ業界では珍しいといわれますが、自分たちが実践して積み重ねてきたビジネススキルを他の会社にもっと伝えていきたいと思っているんです。そのために、メーカーとのハンドリングの部分だけを行うという試みを、少しずつですが始めています。他の会社もどんどん変わって会社として強くなっていくことで、業界全体が良くなればいいなと。

それから神風動画としては、映像の上流部のインフラを掴むこと。原作をストックしていきたいと思っています。その原作がアニメになるのか、書籍なのか、映画なのかわからないですが、物語のストックを少しずつはじめているんです。アニメだけでなく映像・クリエイティブの世界に対しても徐々に領域を広げていきたいなと考えています」

幼い頃、発明家にもなりたかったという水崎さん。2年ほど前に『タテヨコ』という、スマホ画面が縦と横で違う映像を楽しめるスマホ動画アプリを開発。このときに特許を取得し、発明家になるという夢を叶えていました。『AKIRA』に出会い『EXTRA』に心を動かされた少年は、アニメ業界を改革しアニメーターの地位向上のために走りつづけています。アニメ界に新しい風を吹き込んでいく神風動画さんに、まだまだお話を聞きたいと思いました。

日本発!ぶっ飛びアクション・エンターテイメント!「ニンジャバットマン」のBlu-ray / DVDが発売開始

バットマンが戦国時代にタイムスリップし、歴史改変を阻止するために立ち向かう映画「ニンジャバットマン」のBlu-ray / DVDが発売されました。

Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. ©Warner Bros. Japan LLC

絢爛豪華版は、キャラクターデザインを手がけた岡崎能士による描き下ろしデザインの三方背アウターケースとアートデジパック仕様でスペシャルブックレット付き。また、85分の本編に加え、「ポプテピピック」とのコラボCMなどを収めた約90分の映像特典も収録しています。

詳細はこちら http://wwws.warnerbros.co.jp/batman-ninja/home_entertainm

絢爛豪華版

Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. ©Warner Bros. Japan LLC

通常版

Batman and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics. ©Warner Bros. Japan LLC


Interviewee Profiles

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水崎淳平
有限会社神風動画 代表取締役
CGプロダクションとアニメスタジオの混血児として活動する「神風動画」の代表。グラフィックデザイン、ゲーム会社、アニメスタジオ勤務の経験を活かし、遊び心とスタイリッシュな映像センスとCGとセルアニメーションの融合をテーマに、常に新しい表現手法を模索し続ける。「FREEDOM」オープニングや安室奈美恵、EXILEのMV、「ジョジョの奇妙な冒険」オープニング、「ドラゴンクエスト」シリーズのオープニング映像が話題となり、プロモーション制作において確固たる地位を築く。映画「ニンジャバットマン」が世界的に話題となった他、企画・制作として関わったTVアニメ「ポプテピピック」が各メディアで話題となるなど、活躍の場が広がっている。

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