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産学連携イノベーション拠点 「NANA Lv.(ナナレベル )」オープニングイベントレポート 〜経営とデータサイエンスを繋ぐコミュニケーションハブとして、新たなイノベーション創出の場へ〜

2020年4月1日、横浜ランドマークタワーに、産学連携イノベーション拠点 「NANA Lv(ナナレベル )」が設置された。NANA Lv.は、横浜市立大学データサイエンス研究科をはじめ大学院の授業を中心に行うサテライトキャンパス、同大学との協業を目的とした企業のためのプロジェクトスペースやイベントスペースで構成される。

NANA Lv. (ナナレベル

2020年10月19日、「NANA Lv.」オープニングイベントがオンラインで配信された。パネルディスカッションに迎えたのはデータサイエンスの研究や実装に取り組む3名。様々な領域へのデータサイエンスの浸透やイノベーティブな人材輩出、新たな事業創出を、今後横浜を中心に推進していくためには何が必要か、議論が交わされた。

<登壇者(写真右より)>

<モデレーター>NOSIGNER株式会社代表・太刀川英輔氏
横浜スタジアムのすぐ近くにオフィスを構えるデザイン事務所NOSIGNER代表。デザイン戦略のコンサルティングや企業の事業戦略作成にも関わる、広い意味でのデザインを実践している。

横浜市立大学大学院データサイエンス研究科准教授・小泉和之氏
理論統計学および機械学習を研究分野とし、理論研究から企業と協働した応用研究までを行う。学生教育にも力を入れており著書多数。最近力を入れているのはスポーツ統計学で、野球やサッカー、バスケットボール等のデータ解析を行う。

株式会社横浜フリエスポーツクラブ横浜FC事業統括部社会連携グループ担当部長・花村仁氏
自治体、商店街、大学と連携し、地域活性化のための活動を実践。今後、横浜市立大学と協業し、クラブの経営にデータサイエンスを取り入れていく予定。横浜FCをさらに多くの方に知っていただくとともに学生の成長にも貢献していきたい。

株式会社サイカ代表取締役社長・平尾喜昭
マーケティング×データサイエンスを得意とし、マーケティング領域、特にプロモーションに特化した企業課題解決のため、ADVA MAGELLANをはじめとするADVAシリーズを展開する。

データサイエンスの価値とは?

「これから色々な産業にデータサイエンスが参入していくべきだと肌感で感じることはある。」という太刀川氏の発言を皮切りに、データサイエンスの価値とは何なのかその価値を様々な産業に浸透させるにはどうしたらよいのかについて議論が交わされた。

小泉氏:データサイエンスの魅力は、活用することで今まで見えなかった部分の発見に繋がるところ。得意とするのは、エビデンスをつくるところ。

データサイエンスの価値は、見えなかった部分を可視化し、意思決定の理由となるエビデンスをつくれるところだという小泉氏。さらに、データサイエンスを浸透させる第一歩として、データサイエンス×マーケティング事業を展開するサイカ代表平尾はこのように話す。

平尾:データサイエンスを浸透させる一歩目として私たちがやっているのは、多くの費用が投じられ、かつすべてを数字で語れるマーケティング領域で、ROI(費用対効果)を改善する事例を積み重ねること。データサイエンスが経営の数値にダイレクトに与える影響を実際にお示しすることで、データサイエンスに興味をもっていただくきっかけになると思う。

データサイエンスを導入するなら、わかりやすい切り口から切り込むべし

データサイエンスを実践する上で重要なのが「切り口」の設計だ。

平尾:例えば、野球は勝たなければいけない。もっというと安い費用で勝たなければならない。こういったミッションの達成方法をシミュレーションして、その通り達成させることが、データサイエンスの価値を感じてもらういちばんの近道だと思います。

小泉:僕のやっているスポーツ統計も同じです。
スポーツは「勝利」という絶対的な物差しがありますが、サイカさんがやっている広告効果測定の領域などは、いろんな切り口がある分難しいのでは?

小泉氏の問いかけに対し平尾は、このように回答した。

平尾:僕らはその中でも「事業成果に対する連動」というわかりやすいルールを決めています。

まずは、分かりやすく見えやすい事業成果に貢献することで、データサイエンスの価値や必要性が浸透していくのではないかという。

データサイエンスに対する根本的な誤解
ーデータサイエンスとクリエイティビティの関係性

続いて、データサイエンスとクリエイティビティの関係性に迫る。

「データサイエンスでは分析がすべてを決めてくれるような気がするが、先述の切り口の設定やデータから抽出された指標を戦略に落とし込む際など、実はクリエイティビティも必要とされる領域なのでは?」と太刀川氏。

小泉:学生に教える時、まず「説明変数(※2)をつくる」部分の教育に半年くらい時間をかけます。相手が求めているものを意識しながら自由な発想で形にするという点では、確かにクリエイティビティが発揮される領域だと思います。

※2:統計学において、因果関係の原因となる変数(成果に影響を与えうる要素)のこと。

加えて、「経験」というキーワードが話に上がる。

小泉:でも、説明変数をつくるためには経験則も大事。そのため、学生には、企業様との共同研究を通してリアルなデータに触れ、実践的な経験を積んでもらうようにしています。

平尾:確かに説明変数を見つけにいく時に経験はとても重要です。以前アメリカで「すべてをデータで語れるようになったらスカウトマンは不要なのではないか」という論争が起こりました。でもその後、スカウトマンの給料は上がっている。どういうことかというと、野球に深く精通していて、経験と勘を持つ人じゃないと良い選手の説明変数をつくれないということです。スカウトマンの経験と勘、クリエイティビティを通して「どういう選手が成果を残すのか」の要素が分かるからこそ、それをデータ化して相関を探っていくことができるんです。

データサイエンスにおける最初の設計部分にはクリエイティビティが必要とされる。データサイエンスは、いわば定規のようなもの。有効に活用するためにはデータサイエンスとクリエイティビティを両輪にして動かすことが大事だという。

データサイエンスをどう評価するか?

次に、データサイエンスの評価について、議論がなされた。

花村:我々が一番欲しい解は、「最初に横浜FCの試合を見に行くきっかけは何か」というところです。ただ、そのデータは今のところ取れていないし、そもそもどうやって取るんだろうという疑問もあります。これから横浜市立大学さんとの協業の中でその解を探していきたいですね。

太刀川:横浜DeNAベイスターズさんでまさにその部分をお手伝いしていました。朝の横浜スタジアムでコーヒーが飲めるようにしたり、日常的に使える観戦グッズをつくったりするなど、ベイスターズと一緒にライフタイムを送るという意味で「ライフタイムプラスベースボール」というタグラインを作りました。

+B LIFETIME+BASEBALL | 横浜DeNAベイスターズ

太刀川:このプロジェクトの効果測定はされていないけれど、接点づくりという意味では機能しています。仮説のもとに作ったアクションが実際に認知度向上に寄与しているか否かの点でいうと、観客動員数が2.2倍くらいに向上しました。

「この事例はデータサイエンスのプロセスに非常に近い」と話すのはサイカの平尾。

平尾:まず「生活の中に野球があったらファンになる」という仮説があります。その仮説を検証するために「生活の中で野球に触れた」というデータを変数化する工夫ができれば、その関係が証明できます。クリエイティブ起点でデータサイエンスを使った良い事例だと思います。

データサイエンスに再現性はあるのか?

先述の横浜DeNAベイスターズの事例のように、ブランディングのお手伝いをすることで認知度が向上したり、ブランドイメージが向上したり、新事業が生まれたりこともある。ただそれは、結果が出てはじめて仮説の検証ができ、成果に繋がったと分かるものだ。こういった成功例に再現性はあるのだろうか。

平尾:統計の世界で「相関」と言いますが、要素と成果の連動をデータサイエンスで証明することができます。例えば、年末にテレビCMを打つとモノが売れる。ただ、これが年末だったから売れたのか、テレビCMだけの効果で売れたのかは人間には分かりません。ですが、この部分でデータサイエンスの力を使うとかなり解像度高く分かるようになります。

再現性の有無を考える際にも、データサイエンスは有効なようだ。

データサイエンスはDXによってさらに進む

「データサイエンスは、調査と分析に労力を要し、結果を反映させるまでに時間がかかるのが課題ではないか?」視聴者からのこの質問に対し、企業と一緒にデータサイエンスを実践する上で、コスト(費用・労力)に見合うリターンが得られるかどうかは重要、と小泉氏はいう。

小泉:実際に企業様と相談する時に「そのコストに対してリターンがどのくらいあるのか」はすごく意識されます。コストに見合わないからやめようと言われることもありますね。

平尾:データ分析は、単純作業を人力で頑張っていることが多いです。私たちは、人がやる必要のない作業についてはコンピュータサイエンスの力を導入し、システムの力を使って解決してきました。経済論文でも、既存のソフトを使うのではなく自分でプログラミングを書いている人は結構います。業務をIT化してDXしていくことが、今後データサイエンスを浸透させるための大きなテーマになっていくと思います。

花村:データを取る側から言わせてもらうと、データを取るにもお金と労力がかかります。例えば、今私たちが取れていないデータのひとつに「スタジアムで販売しているグッズの販売情報」があるんですが、そのデータを取ろうとすると、まずシステム導入に投資が必要になります。お客様にも、クレジットカードのみ、電子決済のみになるなど、決済面で不便をかけてしまうことが考えられます。SNSは一通り行ってはいるもののそこで取れるデータにも限界があるし、蓄積データをどうやってもっと細かくできるのかというところには確かに課題感がありますね。

完璧なデータはなくていい

昨今、データの取得や整形をデジタル化する試みが主流になってきている。ただ、今後経営にデータ分析を導入していこうとする花村氏がいうように、まず、どのようなデータをどのくらい詳細に蓄積するべきか、ということは多くの企業が最初にぶつかる課題ではないだろうか。

平尾:統計分析はよく味噌汁に例えられます。鍋いっぱいに入っている味噌汁のうち、お玉ですくったひとすくいも同じお味噌汁ですよね。統計学では「標本」と言いますが、サンプルを取って全体を把握しようという取り組みです。データを集めようとした時に完璧に集めようとすると負荷が大きくなってしまうので、実はそんなに集めなくても分かるかもしれないよ、という設計のところからプロが入っていくとよいのかな、と思います。

完璧なデータを集めようとするのではなく、必要最低限のデータがあれば示唆を抽出できる可能性がある。データサイエンスの実践には、最初の設計部分からデータサイエンティストが参加することが重要なのかもしれない。

データの関係を正しく捉えていくために

最後に議論のテーマとなったのは、データサイエンスを扱う時に発生するデータの特異性やモレにどう対処するかという点だ。

これについては「データの信頼性」と「仮説の信頼性」という2つが考えられる、と平尾はいう。

平尾:仮説が間違っていても良い結果が出てしまう場合があります(擬似相関)。戦局を見極めるプロがデータサイエンティストと一緒に行動することで、仮説を間違えるリスクを回避できるのではないでしょうか。

データサイエンスには、相関関係を因果関係だと思ってしまうリスクがつきまとうが、この部分におけるデータサイエンスの技術の進歩はめざましいという小泉氏。

小泉:ここ数年、統計的因果推論は研究者の間でも話題になっています。企業様からの相談も多く、高いニーズがあることがうかがえます。この部分がますます進化することでデータサイエンスはさらに発展すると思います。

ビジネスとデータサイエンスを繋ぐリアルな場が必要

どのデータをどの切り口で取るかというクリエイティビティを高めるためにも、経営視点とデータサイエンスを協働させることが重要だと分かる。そして、データサイエンスの鍵は最初の設計にあるようだ。この設計次第で得られる分析結果の精度も変わってくる。

「最先端のデータサイエンスの知見を得、目線合わせをする場所として「NANA Lv.」のようなプラットフォームがあることで、上記が達成しやすくなるのではないか」とモデレーターの太刀川氏は話す。

小泉:経営の現場の人と我々データサイエンティストがどれだけコミュニケーション取れるかがとても重要だと考えています。両者のコミュニケーションの深化が今後のデータサイエンスの浸透に繋がってくると思います。

花村:私たちは、データサイエンスを活用して横浜FCを応援してくれるお客様を増やしたいと考えています。これが横浜市に対する一つの貢献だと思いますし、クラブが大きくなることによってできる地域貢献も生まれてくるだろうと考えます。まずは横浜市立大学さんとの連携を前に進め、クラブの経営をより大きくしていきたいです。

平尾:「NANA Lv.」に集まってくる皆さんは色々な課題感を持っていると思いますが、いずれにしても「成果を出すことを約束するのがデータサイエンス」というより「成果が出る確率を上げていくのがデータサイエンス」だという意識を持つことが大事なのではないでしょうか。その中での大きなファクターが、仮説を持つ現場の方とデータサイエンティストの協働なのだと思います。

データサイエンスを武器として活用するには、ビジネスとデータサイエンスの協働が必要だという認識が揃った。

ありそうでなかった両者のリアルな協働の場「NANA Lv.」。

この場所を中心に、横浜、そして日本全体とデータサイエンスが広がり、大きなイノベーションがうまれ育っていくことを願う。

【イベント情報】
2020年10月19日(月) @横浜ランドマークタワー7F NANA Lv. (ナナレベル)
『新たな時代の人材育成と産学連携〜データサイエンスを軸としたイノベーション』

●基調講演「データの力で切り拓く新しい時代と日本の再生」(横浜市立大学学長補佐 兼 大学院データサイエンス研究科長・山中竹春氏)
●パネルディスカッション「横浜からデータサイエンスによるイノベーションを生むために」(横浜市立大学データサイエンス研究科 准教授 小泉和之氏/株式会社横浜フリエスポーツクラブ 横浜FC事業統括部担当部長 花村仁氏/株式会社サイカ 代表取締役CEO 平尾喜昭/<モデレーター>NOSIGNER代表 太刀川英輔氏)

【関連情報】
●横浜市立大学ホームページ:https://www.yokohama-cu.ac.jp/index.html
●株式会社横浜フリエスポーツクラブオフィシャルウェブサイト:https://www.yokohamafc.com/club/club-information/
●NOSIGNER株式会社ホームページ:https://nosigner.com/
●株式会社サイカホームページ:https://xica.net/

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