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電子カルテの黎明期を体験したエンジニアの私が、メドレーに入社した理由

はじめまして。CLINICS事業部 事業企画グループの児玉と申します。

メドレーには2018年7月に入社しました。不惑の年を目前に控えての転職で、社内では間違いなく「平均年齢を上げている側」ですが、意外と同世代のメンバーが多くて安心しています。

今回はこのような機会をいただきましたので、メドレーに入社した理由と、普段はあまり言葉にすることのない「医療ITへのこだわり」を語らせていただければと思います。

エンジニアとして足を踏み入れた医療の世界

新卒からずっと医療IT業界でエンジニアとして働いており、メドレーは3社目になります。

新卒で医療系のシステムベンダーに入社した頃は、当時の厚生省(現:厚生労働省)よりカルテの電子保存を認める通達が発表されて間もない時期であり、「電子カルテ」という概念が一般化されてきた時期でした。

電子カルテとは、医師が記載する患者の診察内容・経過記録を電子化した「診療録記載システム」としての役割と、医師から診療技術部門(薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師など)に、紙の伝票を用いて依頼していた検査・薬剤などの情報を電子的に送信する「オーダリングシステム」としての役割を併せ持ちます。(前者のみを示す場合を「狭義の電子カルテ」、後者も含める場合を「広義の電子カルテ」と呼びます。)

ものづくりの仕事がやりたかったのと、「どうせなら新しいものを開発したい」という漠然とした理由で選んだ業界でしたが、医療の奥深さに面白みを感じ、結果として現在に至るまで一意専心に取り組むことになりました。

初めて足を踏み入れた病院の舞台裏では、早々に知識の壁に阻まれることになりました。医療者と円滑なコミュニケーションをとるためには、日本の医療制度など「法的な観点」、検査や治療に関する「臨床的な観点」、各部門の役割と業務内容など「業務的な視点」の知識が必要となります。病院の診療業務の中核を担うシステムを構築するので、医療の専門知識が必要なのは当然なのですが、これは医療者ではない人が容易に習得できるものではありません。

身近に医療者がおらず、気軽に聞ける環境もなくて大変でしたが、専門書を読み漁り、地道なインプットを続けることで少しずつ理解できる内容が増えてきました。自宅の書棚には、テクノロジーの書籍より医療関連の書籍が多かったような気がします。

電子カルテの黎明期

元来、病院は紙の伝票を回覧して患者の情報を伝達する運用が一般的でした。伝票の書式は各病院ごとに最適化されていたので、これを無理にペーパーレス化することで、逆に業務効率が損なわれてしまうのではないかと心配する病院が多数派でした。この打開案として、電子カルテに入力されたデータと、電子カルテから発行した印刷物を併用する運用が浸透することになりました。

このような背景から、エンジニアとしてデビューした頃は、ひたすら帳票を印刷する機能を作っていました。「電子化するためのシステムなのに、何でこんなに印刷物が必要なんだろう?」と不思議に思っていたくらいです。(各メーカーのプリンタに、やたらと詳しくなりました。)

今になって考えるとあまり効率の良くないやり方もありましたが、医療機関とベンダーでお互いに試行錯誤して(時には怒られ)手探りでシステムを構築していく過程はとても刺激的で楽しいものでした。

当時を振り返ると、業界全体として反省すべき点も多くあります。たとえば、「電子カルテを普及させること」が目的化され、データの規格を統一するための「標準化」に関する議論が十分に行われないまま、各ベンダーが独自の規格で開発を進めてしまいました。そのためデータに互換性が無く、他社ベンダーの電子カルテに変更したい医療機関は、新しいシステムへのデータ移行に大きな負担を強いられることになってしまいました。診療録は医師法で5年保存が義務付けられていますので、「移行できないのなら仕方がない」「あきらめよう」...と言う訳にはいきません。結果として業界全体に大きな負債を残すことになってしまったのです。

医療ITの行く末を案じる

エンジニアとして開発経験を積み、そこそこの技術力と医療知識が身についてきた頃からは、医療情報の標準規格を採用した開発にこだわるようになりました。きっかけは、ある米国製システムとデータ連携を行うための基盤開発を担当したことからです。

米国では医療情報システムのデータ連携に、HL7(エイチ・エル・セブン)という国際標準規格を利用することが一般的です。先方から受領した仕様書も当然のようにHL7をベースに記述されていました。(英語があまり得意ではないので、まず英文の仕様書に躊躇しました。)一方、日本では標準化の普及が遅れていた背景から、標準規格を組み込むためにカスタマイズが必要になるという矛盾した状況であり、その基盤開発を担当するまで、私自身もHL7を利用したシステム開発の経験はありませんでした。紆余曲折を経てのリリースではありましたが、無事に稼働させることができ、結果として標準規格を利用することで「認識の相違」を最小限に抑えることが可能であると、身をもって体験することができました。

こうして振り返ってみると、共通言語を利用することによりコミュニケーションの齟齬を減らすのは、至極当然のことですよね。医療ITの未来もそのようになっていくべきではないかと、標準規格を採用した開発にこだわるようになったのはこの頃からだと記憶しています。

医療分野におけるIT活用のあるべき姿を考える

前述の通り、標準化に興味を持つようになってからは、様々な標準規格を学習してきました。書籍を読み、学会や研究会などで講義を聴くうちに、カルテを電子化することの本質を考えるようになりました。

電子カルテのメリットとして、一般的には「手書きカルテと比べて文字が読みやすい」「職種間での情報伝達・共有が容易に行える」「紙カルテの保管倉庫が不要になる」などが語られています。しかし、本当にこれだけでITの恩恵を最大限に享受できていると言えるのでしょうか。紙に記録されていたデータを電子化するということは、コンピュータの得意とする「記憶」「検索」「計算」を最大限に活かすべきであると考えています。データが電子化されてなければできないこと、即ちカルテを電子化することの本質は「集積されたデータを活用して、新たな価値を生み出すこと」にあると私は考えます。

このような概念が「ビッグデータ」と呼ばれるようになって久しいですが、「医療ビッグデータ」には集積されるデータに対して厳しい品質管理が求められます。一般消費者向けのオンラインショップでは、商品を購入する際にユーザーの購入履歴データを活用して新たな商品をレコメンドするマーケティング手法が普及しています。仮に購入履歴データの品質が悪く、全く見当違いの商品がレコメンドされてしまっても社会的な問題には進展しづらいでしょう。しかし、もし同じような発想から「電子カルテにレコメンド機能を実装したい」となった場合、臨床的に間違った医薬品や検査がレコメンドされてしまっては医療事故に発展する可能性もあります。極端な例でしたが、品質を担保するためには標準化される必要があり、そのために標準規格があると考えています。

また、現在の標準規格は専門分野ごとに検討が進められており、それぞれのデータは単独で存在しているため、データの相関関係を調べることが難しいという課題があります。一般的な診療のプロセスは「症状問診 → 診察/検査 → 診断 → 治療 → 転帰(治癒・死亡など)」のような経過をたどります。診療記録、検査、治療などは、独立したひとつの「点」として存在しており、その「点」と「点」をつなぐことができません。この診療プロセスの経過をデータからトレースすることができれば、ざっくりとした相関と傾向を分析することが可能になるのではないでしょうか。(例えば、”XX”の症状で”YY”という治療を行なった場合、または行わなかった場合で、どのような経過をたどるか。...などの分析が可能になるかもしれません。)

もちろん、これが唯一の答えだとは思っていません。様々な思想があって当然だと考えています。そしてどのような思想においても、大切なのはテクノロジーそのものではなく、テクノロジーを活用して医療に貢献することが大切であると思います。

1通のダイレクトメッセージ

医療ITについて意見交換しませんか?

メドレー代表取締役社長の瀧口からSNSにダイレクトメッセージが届いたのは、ちょうど大規模なシステム導入の仕事が完了して、ゴールデンウィークの余暇を過ごしていたときでした。

メドレーのことも知っていましたし、面白そうな会社だなと思っていましたので、瀧口からの提案には即座に快諾しました。これがファースト・コンタクトでしたが、後から社内で聞いてみると珍しいケースだったようです。

当時は老舗のSIerに勤務しておりましたが、エンジニアとして自ら手を動かすことに拘っていた私の想いを上司は理解してくれており、待遇に不満があったり転職を考えていた訳ではありませんでした。

しかし、実際にメドレーを訪問して話を聞き、代表医師の豊田が執筆した書籍を読み、Wantedlyの「私がメドレーに入社した理由」や、エンジニアが書いている「Medley Developer Blog」を読み込んでいくうちに、「メドレーで働いてみたい」という気持ちが強くなっていきました。

(後に、私も書くことになるとは夢にも思いませんでした。)

決め手となったのは、医師とエンジニアが協同してプロダクト開発に取り組んでいるところです。前職で電子カルテのプロダクトを開発している際にも、医師の意見を参考にすることはありました。欲を言えば顧客とベンダーの関係としてではなく、同じ立場同じ目線で議論してみたいと考えていましたので、複数名の医師が在籍しているメドレーは魅力的でした。

新しい世界に活躍の場を求めて

最初は、患者とつながるクラウド型電子カルテ「CLINICSカルテ」のカスタマーサクセスチームとしてジョインしました。CLINICSカルテの魅力は「患者とつながる」という本質的なコンセプトにあります。オンライン診療とカルテのシームレスな連携はもちろん、患者側のスマートフォンアプリを利用して検査結果を共有することも可能です。アプリの活用方法については、例えば受診が途中で途絶えた患者にリマインドでメッセージを送信して治療継続率を向上させるなど、まだまだ発展性があると考えています。

これまでの経験の中で、システム導入のユーザーサポートを主たる業務としていた時期もありましたが、近年は開発寄りになっていましたので、フロントに立って顧客と対峙するのは久しぶりでした。

当時のCLINICSカルテは、まだパイロットが稼働したばかりで、私を含めて3人の導入メンバーで本格的に医療機関への導入をスタートしていく段階でした。走りながら導入工程を見直してくような状態でしたが、作業の効率化や、属人化を防止するための仕組み化などが圧倒的なスピード感で進められ、半年も経たない頃には導入チームとしての「型」が形成されていたように思えます。

その後、カスタマーサクセスを卒業して、新設グループの「事業企画」に異動しました。事業企画では、事業サイドから発生したプロダクトへの要求事項を精査して開発サイドと協議を行なったり、カスタマーサクセスチームの業務を効率化するツールを作るためにコードを書くこともあったりと、過去の知見をフルに活用できているのではないかと思います。

また、メドレーでは医療機関や患者がもっとインターネットの恩恵を享受することができるような社会を実現するため、官公庁からの入札案件にも積極的に参加しています。そのうちの1つとして、厚生労働省の「電子処方箋の本格運用に向けた実証事業」を受託し、私も開発チームに参画しました。実証事業の概要と次世代医療情報標準規格のFHIRに関して、こちらに詳しく書いておりますので、興味のある方はご一読いただければ幸いです。

根底にある美学

洗練を突き詰めると簡潔になる (Simplicity is the ultimate sophistication)

レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な言葉です。私はこの言葉が好きで、前職ではプログラミングにおける「美学」としていました。

適切な粒度に抽象化された型(オブジェクト指向プログラミングでは"Class"と呼びます)は、シンプルで理解しやすいものです。しかし、そこに粒度が異なるものを実装したい局面が開発の過程では必ず訪れます。ここで代替案を考える手間を惜しみ、短絡的な実装を行なってしまうと、後々のメンテナンス性を著しく下げてしまいます。その結果、将来の開発チームへの技術的な負債を残すことになりかねません。時には開発スピードを犠牲にしてでも、シンプルで美しい型を保つために熟考することが大切であると、心に刻んでいました。

メドレーのプロダクトも、美学が根底にあると考えています。作るものは極めて実用的であり、機能的であることを美学とし、プロダクト設計における絶対の指針としています。新たな機能を追加する際には、その機能が複雑化・冗長化されたものではないか、指針を共通認識とした上で入念に議論を重ねます。

言葉にするのは簡単ですが、それを組織レベルで体現できていることは本当に凄いことだと思います。美学を追求することで、洗練された工業製品にも通じる「機能美」をまとうプロダクトに成長していくと信じています。

そんな私は、こんな人と働きたい

CLINICSカルテ」は、医療機関の診療の中核を担うシステムです。電子カルテ導入の成否により、医療機関の業務効率は大きく左右されますので、プロダクトの品質と安定稼働、そしてカスタマーサクセスの堅実なサポートが重要になります。広範な医療知識が必要となる場面もありますが、1つの分野を突き詰めることが好きな人は、きっと電子カルテの「面白さ」に共感していただけるのではないでしょうか。

「医療分野におけるIT活用のあるべき姿とは」

その答えは必ずしも1つではありません。理想とする未来はどのような姿か、それを具現化するためには何を解決すればよいのか、そしてそのために自分にできることは何か。自分の意見を明確に主張した上で、他人の意見を尊重する。そのような人を歓迎します。

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