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同じ未来を見つめる伴走者たちの素顔|vol.8(前編)

自分たちで国家のようなものも、経済圏も作れるかもしれない」

NCL西条(愛媛県・西条市)/マイクロワーク パートナー

林 篤志さん(Next Commons Lab Founder / COMMONS Co-Founder)


《PROFILE》

Atsushi Hayashi●2016年、ポスト資本主義社会を具現化するための社会OSを実装するため、Next Commons Labを設立。2017年より、それぞれの幸せを基準に誰もが小さな社会をつくれる共同体プラットフォーム「COMMONS」を発足。Commons inc. 共同代表。「日本財団 特別ソーシャルイノベーター」(2016)、「Forbes Japan ローカル・イノベーター・アワード 地方を変えるキーマン55人」(2017)に選出。

社会自体を変える試みをスタート!

人口約10万人の愛媛県・西条市。ICTを利活用した豊かなまちづくりを目指しており、特に教育分野への導入では国内トップクラスを誇るほど。新しいテクノロジーを受け入れる土壌があるこの西条において、分散型のデータ管理技術といわれるブロックチェーンを用いたNCLのプロジェクトが動き出そうとしています。

それが、現在ラボメンバーを募集しているマイクロワークプロジェクトです。概要は後ほど説明するとして、「マイクロワークと小さな経済圏で地域をつなぐ」というこの構想は、社会そのものが大きく変わる、夢のような現実の話。同プロジェクトのメインパートナーであるCommons inc.とNCLの代表でもある林 篤志さんに、プロジェクトの具体的な構想やどんな未来が見られるのか語っていただきました。

社会は変わらないという現実と向き合う

「社会はなかなか変わらない。だったら自分たちで理想の社会そのものをつくればよい」といった発言をさまざまな場でされている林さん。それはとてもインパクトのある言葉であり、NCLが掲げる“ポスト資本主義社会の具現化”の根底にある思いといえるでしょう。

林さんは2011年に、東京から高知県の土佐山という人口約1千人の村へ移住。村を丸ごと学校にするという土佐山アカデミープロジェクトを立ち上げ、地域の活性化に取り組んできました。その活動の先に立ちはだかるのは、変わらない大きなメインストリーム。社会との向き合い方を考え直すようになっていきました。

「プロジェクトをきっかけに、これだけの移住者が増えたとか、起業する人が何人か出てきたとか。小中一貫教育の推進によって小中合わせて60名ほどだったのが今は100名超えたな、とか。ある程度、点での変化は実感できるんです。でも、社会全体の大きな枠組みというのは変わっていないので…。既存の流れというのはものすごく強いんですよ」



その強い流れそのものがいいとか悪いとかという話ではなく、「なかなか変わらない」ということが問題なのだといいます。

「NCLもそういった部分があるんですけど、みなさんがやっているほとんどがリノベーションなんですよ。もともとあった家の内装を変えたり、少し構造が変わらない程度に壁をぶち抜いたりしているんですけど、柱など元々ある構造は変わらないので限界がある。なので、土佐山やほかの地域で約10年近く僕がやってきたことって、結局リノベーションだったんですよね」

社会に対するリノベーションの限界を感じ、林さんは「やはり新築を建てなきゃいけない」と思うようになっていったと語ります。

「ただ、それって本当にできるんだろうかという不安はあったんですけど…。よくよく考えてみれば、基本的にはお金も、国家も人間が勝手に妄想して作ったもの。難しい言い方をすれば共同幻想なんですよね。みんなが『これは価値がある』と思っているから、日本中で日本円が使えるだけですし。国家というのも、今年で明治維新150周年。たかだか150年前にこんな感じかなと作っただけなんで。作ったことがないだけであって、実は新しく作ること自体はそんなに難しくはないんじゃないかと思ったんですよね」

新しい時代にふさわしい地域における共助社会の実現に向けて、トークンエコノミーによって経済圏を民主化するという動きを加速していきます。

「現在のブロックチェーンを代表とする技術をうまく使いこなして、自分たちで国家のようなものも作れるかもしれないし、経済圏も作れるかもしれない。お金だって、自分たちでデザインして作ればいい!と思ったことが、今回のプロジェクトにもつながっていますね」

複数の経済圏に多重層的にジョインすればいい

以前、北海道の南富良野で面白い実証実験がありました。パートナー企業のプロジェクトの一環で、廃校を2週間貸し切り、100人を集めて暮らしてもらったんだそうです。そこでは法定通貨は一切使えず、支払いは2週間限定で発行されたトークン(地域通貨)によってのみ。たとえば「日曜大工が得意だから家具を作るよ」「時間余っているから子どもの面倒を見るよ」といったように、お互いの価値交換がされていきました。

「2週間の生活の中における、ウォンツとギブのやりとりですよね。価値交換した時に、誰から誰にトークンが移動していったのかというのをデータで時系列に可視化していったんですけど、なんとなくコミュニティの中核となるようなハブになる人が出てくるわけですよ。この人というのは、他人からお願いもたくさんされているし、自分も誰かに依頼しているという一人なんですけどね」

つまり、人々の協調行動が作り出す社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の可視化みたいなことができるようになったといいます。



「重要なのは資本主義が悪いわけじゃないと僕は思っていて。十分、資本主義の恩恵を得ているので…どちらかというと資本主義という一つの選択肢しかないことが不幸だと思うんです。何をするにしてもお金を稼がなければならない。要は、お金がないと生きていけないわけですから」

一つしか選択肢がないという資本主義の問題によって、資本家にお金が集まりやすくなり、当然そこには勝ち組と負け組といったヒエラルキーが生まれることになります。

「先ほどの2週間の実験での関係性が、公平かといったら、そうではないわけですよね。この中にもヒエラルキーがあるわけですよ。たとえば、地域コミュニティに対する貢献度が高いとか、感じがよくてコミュニケーションが上手な人。自分で何かをお願いするし、お願いされやすい人にトークンが集まりやすいという傾向がありますよね」

人間力の高い人ほど優位となり、コミュニケーション下手で、人とあまり関わりたくない人という人は、ここでは不利になってしまいます。1つの地域コミュニティ、1つの経済圏だけでは生きづらい人が出てきてしまうというわけです。

「だから、あらゆる無数の価値観に基づいた無数の経済圏があって、我々は複数の経済圏に多重層的にジョインすればいい。つまりAという経済圏でのヒエラルキーでは下かもしれないけれど、Bという経済圏では真ん中あたり、Cという経済圏では上の方にあるという形でバランスをとっていくようになるんじゃないでしょうか」

可視化によって広がる小さな経済圏での可能性

ここであらためて、マイクロワークについて説明をしておきましょう。その名の通り、地域内にあるちょっとした仕事=マイクロワークを見えるようにして、仕事をお願いしたい人と仕事をやりたい・できる人をマッチングする仕組みをつくります。そして、その報酬を法定通貨ではなく、地域にある提携先のお店などで使える地域通貨で支払います。これがいわゆる小さな経済圏になるというわけです。

紙幣やコインといった従来の地域通貨と違い、ブロックチェーン技術を用いるため、いつ、だれが、どこで使ったのかもデータで見られるようになるといいます。その地域通貨の動きを解析することで、人間関係や地域との関わり方、どんな課題があるのかなどが可視化され、まちづくりをする上での重要なデータが入手できるのです。

「簡単にいうと、すべて電子マネー化されたとして、スマホのウォレットアプリの中には日本円も持っているけど、たとえば西条コイン(仮)も持っているし、違うコミュニティに属していればその別の通貨もある。さまざまな価値観によって構成された、いろいろなコミュニティごとの通貨を持っている。そんな時代になっていくだろうと思っています」



同プロジェクトのパートナーとして技術面を担うCommons Inc.は、ブロックチェーンを使った新しい経済圏を作るCommons OSというツールを開発しています。取引所を立ち上げたり、開発したウォレットアプリのベータ版をリリースしたり。ダッシュボードでは、メッセージのやりとりや、取引金額といったPDCAを回すためのあらゆる情報もすでにモニタリングできるんだとか。さらに、GPSを使って、どこで決済がされているのかも把握でき、インバウンド向けの活用も期待が高まります。

「外国人が訪日した際に、たとえば主要な駅などで西条コインをクレジットカードで購入していただくとしますね。その外国人は、QRコードが貼ってある西条市内のお店であればどこでも、スマホをかざすだけで西条コインによる決済ができるというわけです。田舎の商店一つひとつにクレジットカードの端末を導入するのと違って、QRコードを1枚貼れば済みますからね。

しかも、外国人がどこで決済をしたのか、またスマホのGPS機能を使って、どのくらい町に滞留しているのか、どのように町のなかを動いているのかという情報を全部データ化できてしまう。データに基づいたまちづくり、インバウンド対策というのも多分できるんだろうなと。ものすごく具体的なことをお話しすると、こんなことを想定しています」

自分たちなりの自治モデルも創出できる

「田舎や地方でもコミュニケーションは少なくなってきているし、昔と違って両隣三軒が何をやっているのかもわからなくなっていますよね。一方で、人口減少とともに行政の税収が減っているなかで、すべてを行政がやるという時代でもないわけですよね。

コミュニティの中で『どんな人がどんなことで困っているのか』もしくは、『どんな人がどれほど時間が余っていて、どんなスキルを持っているのか』 ということをちゃんと可視化をしてあげて、その価値交換を地域通貨を介して行なっていくことによって、今までは法定通貨では流通しなかったような、地域の困りごとや課題を仕事にすることができるんです」

林さんたちはこの一連の流れを、“マイクロワーク化する”と呼んでいるんだといいます。

「これまでは、可視化もされていなかったし、断片的で、不連続なものなので、なかなか法定通貨ベースの仕事になりにくかった。その仕事を地域通貨にのっけることによって、メインにはならないかもしれないけれど、サブの経済圏で流通し、結果的に行政や地方自治体が何もかもをやらなくてもよくなる。ある程度コミュニティのなかで享受が生まれて、自分たちなりの自治のモデルをつくっていけるんじゃないかと、僕たちは期待をしているんです」

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