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ぼくらの100日間戦争~第三章「命がけの最前線と、経営陣の涙」

※この記事は、フローレンス みんなで社会変革事業部 広報マネージャーの岡水恵弥が、個人ブログにて発信した内容の転載です。新型コロナ緊急事態下でおこった緊急支援活動現場での様々なドラマ、裏舞台を個人的記録として1話1テーマ形式で残すものです。

前回まで:プロローグ第一章~たたかいの定理第二章~あなたの声が爆速で国を動かす

世界が恐怖に包まれる中

それは、週明けの4月6日月曜日に私たちフローレンスが「新型コロナ緊急支援プロジェクト」のスタートをリリースする直前の、経営会議でのことでした。

世界では3月末までに100を超える国がロックダウン(都市封鎖)を決め、数十億人が影響を受けていました。

誰も経験したことのない未曾有のパンデミックにより、4月初めまでに感染者は世界で140万人超え。

海外メディアは連日病床から溢れる感染者、死者の映像を生々しく報道していました。


日本でも、世間は安倍首相からの「緊急事態宣言」発動が秒読みの空気に、緊張感はMAXだった時期のことです。

コロナ対応で変化する新しい働き方や非日常のライフスタイルを楽しむ余裕があった頃を過ぎ、得体の知れない恐怖に誰もが笑っていられなくなってきた。

そんなムードの中でした。

4月2日木曜、重い意思決定

経営会議で、フローレンス代表駒崎(社内通称こまさん)が、意を決したように発議しました。

経営会議には、駒崎を含めディレクターラインが6名と、各事業部のマネージャー(病児保育事業部、障害児保育事業部など現場事業部と、広報人事など)が出席しています。

駒崎「いよいよ来週明けに緊急支援活動をスタートします。僕は、こんな時こそ福祉事業者としての使命を果たす対外支援をしたいと思う。」


長時間進行してきた経営会議の議事は、600名の職種の異なるスタッフの休業補償や保育現場の運営に関する細かなルール作り…事業利益への影響とコストの精査など、とても難しい意思決定が続いていました。

音もなく雪が積もるように、疲労感がうっすらと会議の体温を下げていく。

駒さんの発議には、そんな空気を打破する意図もあったかもしれません。

保育スタッフを支援現場へ

駒崎「コロナウイルスはもちろん脅威だけど、一方で親の仕事がなくなりそうになってる家庭や、一斉休校で親子が狭い空間に長時間一緒にいることでリスクを抱える家庭も増えると思う。僕はそっちもすごく怖い。
そこは福祉の出番で。僕らが率先してやるべきじゃないかと。」


「具体的にどんな支援を?」ディレクターの杉山(社内通称:すーじー)が冷静に議論を進めます。

フローレンスの緊急支援活動は、主に障害児家庭や生活困窮家庭に物資や食品の配送援、休園・休校に対応するための託児の支援などを検討していましたが、争点となったのは「保育スタッフが支援が必要なご家庭に伺い、サポートやソーシャルワークの窓口となる」という支援施策についてでした。


駒さんの発議どおり緊急事態下で誰にも頼ることができずに孤立して、貧困や虐待のリスクが日に日に高まる子育て家庭が水面下で増えていることは、自社で実施した全国ニーズ調査アンケートの結果からも確実。

「仕事を失い、どうしていいかわからない」「子どもに手をあげそうになっている」「障害児の24時間介護で心身疲弊が激しい」そうした悲痛な声には、一刻を争う切迫感もありました。

「いま、首都圏全体が在宅勤務環境になって、親御さんの”病児保育ニーズ”は減ってます。事実、病児保育事業部のレスキュー隊員※の稼働も激減して不安な社員も多い。
こんな時こそ、スタッフが困っている家庭にレスキュー隊員が急行してフローレンスだからこそできる支援を届けてはどうだろう」


駒さんが、力強く言葉を重ねていきます。

※レスキュー隊員=利用者宅に訪問して病児保育を提供する専門保育スタッフを、社内でこう呼んでいます。

同じ気持ちなのに、すれちがう議論

病児保育事業部を所管するディレクターの赤坂(社内通称:みどりさん)が、駒さんの考えに同意を示しながらも懸念を明らかにしました。

赤坂「病児保育ひとり親会員のご家庭に、近隣に住む保育スタッフが支援物資をご自宅に届ける支援を事業部内でも考えました。
困ってることがないか短時間ヒアリングするだけでも、リスク低減になると思い。ただ・・・」

「世の中全体として、移動を減らそうと言われている中、今どちらを優先すべきかを迷います。訪問を受けるご家庭も、訪問をするスタッフも不安が大きいのでは、と。」


続けて、現場のスタッフや利用ご家庭と最前線で接している病児保育事業部のマネージャー小川(社内通称:おーじー)、三枝(社内通称:さえ)が発言します。

「多くの人が移動を避け、親御さんも外出を避けている中、家に外部から人がくること自体、濃厚接触ととらえられませんか。」

「現場のスタッフの中には、感染のリスクを不安に思っている人もいます。また、万が一自分が媒介してしまわないかと懸念する声も日々聞いています。」


※写真は通常の病児保育サービスご自宅訪問時のイメージです

駒さんは、少し焦っているように見えました。

駒崎「3週間休校になって一番懸念されるのは、各家庭の精神状況の悪化などからくるストレスによる虐待だと思う。
僕たちは、支援団体なんだから支援すべき。優先順位の問題。」

小川「急いで支援の具体運営に入る前に、現場スタッフの納得や事前準備は丁寧にしたいです。保育先の現場に出向き、最前線で支援を届けるのは隊員のみんなです。」

駒崎「媒介云々の話をしはじめたら、保育園や病児保育も運営停止とすることになってしまうよね。」

赤坂「事業やサービスを止めるという判断ではなくて、プラスアルファの支援を今するのかどうか?という話です。」

駒崎「そもそも、我々の本業は保育事業を運営することではなくって、困っている親子を助けることだよね。」

小川「困っている親子がいたら行って助けてあげたいっていうのと、社会全体として今求められることと。
今、どちらが大事か握れていない中で・・・感染のリスクに関する情報も錯綜してて現場スタッフが不安を抱えているのは事実です。」

スタッフが笑顔でなければ

駒崎「まず、やろう!が前提じゃないの?それで、ハードルをなんとかするのをみんなで考えたいよ。目の前で倒れている人がいたら、助け起こすでしょう?」

駒さんが、めずらしく苛立っていました。

フローレンスのビジョンと使命に立ち返れば、家庭のリスクに切り込む活動を今すぐ開始することに何の迷いがあるの?と。

その時、みどりさんが「やりたいんです!私達だってやりたいんです。だから・・・」と、言葉をつまらせました。

組織の使命を全うすることについて、ここにいる全員が同じ気持ちでいる。だからこそ、最前線の現場のみんなとだって同じ気持ちでなければ、実行はできない。

ディレクターのみどりさんと病児保育事業部のマネージャーが泣いていました。


100名を超えるフローレンスの病児保育のレスキュー隊員は、20代からシニアの年齢の隊員まで様々です。

施設型の保育現場とちがって、たった一人で毎日違うご家庭に出向いて保育を提供する、ある意味とても孤独な環境で働いています。

しかし、利用会員情報や保育履歴を管理し、様々な情報をもってレスキュー隊員一人ひとりの相談に事務本部スタッフがメールや電話で対応しながら、日々のチーム保育を実現しています。


団体設立以来16年続けてきているフローレンス独自の病児保育事業の運営は、こうしたどのベビーシッター会社にも真似ができない現場スタッフと事務局スタッフの絆をもって実現しています。


フローレンスの現場のスタッフが心から納得して笑顔で現場に向かえないのなら、支援先の親子を笑顔にすることができるだろうか?
それを、病児保育事業部のディレクターとマネージャーは駒さんに訴えたのでした。

駒さんと事業部のみどりさん、おーじーさん、さえさん、それぞれの気持ちが全部分かって、心がギュッとなり・・・。
他の十数名のディレクター、マネージャーはこのやりとりをじっと見守っていました。

私は、2ヶ月以上たった今でも、この日の会議を思い出すと泣けてきます。

誰ひとり置き去りにしない

「ごめん・・・本当にごめん。僕がよくなかったです。」

「こどもクリニックのじゅんじゅん先生※にももう一度相談して、現場のみんなが安心して働けるよう、できること何でもやっていきましょう」駒さんが、謝りました。

マーガレットこどもクリニック・・・フローレンスグループの医療法人社団ペルルによる小児科です。渋谷区初台の「おやこ基地シブヤ」にて病児保育室フローレンスと小児科を運営しています。じゅんじゅん先生こと田中純子医師がクリニックの院長。

私たちが「新型コロナ緊急支援プロジェクト」をリリースした日の翌日、4月7日に政府から緊急事態宣言が発動されました。

実際、この後フローレンスでは現場スタッフ向けに大規模な抗体検査を行うなど、スタッフの安心安全を守る社内施策が実施されました。


最前線に立つスタッフの命と心を守り、パンデミックを広げないことを第一優先にしながら、国内の親子が孤立しないよう、あらゆるサポートの可能性を探る指針で支援活動がスタートしました。

場合によっては、クビが飛ぶ案件です。

今回は、ここまで書いちゃっていいかな…と正直アップを迷う内容でした。

本当に経営会議の内容もコンフリクトもそのまま書き起こしていますので、例えば別の組織であれば即アウト案件ですね。

noteを始める前に、経営会議で、
「あ、あの!緊急支援の現場や裏舞台を個人的に記録に残したいです。書いてもいいですか」と聞いたら、全員「いいね〜やってやって!」「楽しみ」「残しておくの大事だよね」とふたつ返事で背中を押してくれました。

(まさか、この日の内容を書くとは誰も思ってなかったかも・・)

役職が違っても、部署や職種が違っても、同じ方向を向いてる人たちと働けるというのは、ベースの安心感になっています。

ライフとワークが地続きで、「世界一子育てしやすい国にしたい」「理不尽な環境で泣いてる親子を、ゼロにしたい!」って考えてる熱いメンバーもいますし、

「え、僕はそんな深く考えたことないわ〜。」って言う人や「そんなそんな。私は子どもや保育が好きなだけ」って言う仲間もいるけど、
手を抜かない仕事ぶりを見てたら、その人の中の濁りのない成分が共鳴してここに居るんだと分かります。

今回は、そうした暑苦しいかもしれない組織の一面が漏れ出てしまう内容でした。
でも、こんな風に泣いたり笑ったり悩んだりぶつかったりしながら、日々現場の運営や支援活動を行っています。

次回は、さらに支援現場スタッフのジレンマにフォーカスします。

次回予告:崩壊寸前、支援が必要なのは…私?!

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