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なぜ社員が本気で配信環境を整えるのか?全社集会の構成と機材に迫る

はじめに

こんにちは!Chatwork 株式会社の Product Manager (PM) の宮下です。 PM の仕事は Chatwork というプロダクトをユーザーの皆様の課題解決になるような方向に導きつつ、同時に会社としても提供価値から正しく対価が得られるように考えていくことです。そんな PM の私がひょんなことからオンライン全社集会の実施に携わることになりました。

さて、 Chatwork では毎月の「合同朝礼」という場と、半年に一度の「全体合宿 (Cha 会に名称変更)」という 2 つの全社集会があります。本来であれば、合同朝礼は東京・大阪オフィスとリモート参加者の間をビデオ会議システムでつなぎ、 Cha 会は 1 拠点に一堂に会して開催するものです。

特に Cha 会は大事な場で、全社的な目標や進捗、数値を共有するだけでなく、普段やり取りが少ない社員同士のコミュニケーションを生み出す場としても機能しています。しかし、 2020 年は新型コロナウイルス感染症の流行で全社的に在宅勤務となり、一堂に会しての開催は不可能となってしまいました。

入社直後から在宅勤務となった社員も多く、チャット上で名前はよく見るけど、実際に話したことがないという人も大変多くなってきています。そこで、2020 年は Cha 会をオンライン開催することになりました。しかし、オンラインに場を移すといっても簡単なことではありません。

今回は直近開催された 2020 年末の Cha 会における "配信機材" という観点で、少しお話してみましょう。

なにで配信する?

PM の仕事はプロダクトの "何を、なぜやるのか?(Why と What) " を考えることです。これを納得できる形で伝えられないと、 "どうやって実現するのか (How) " を決めることはできません。オンライン配信も同じです。何を、なぜやるのか?が分からないと最適な配信構成を決めることはできません。

この Cha 会における PM は主に人事広報本部のメンバーです。どのような構成で、何を伝えたいのかを考えた上で、これをどう実現するのか?という話がおりてきます。そこでもらった話からまず、以下のことが決定しました。

  1. 聴講パートは YouTube Live でおこなう
  2. 表彰の場では受賞者ともつないで、会場と双方向の映像付きの通話をおこなう

オンライン配信の仕組みはさまざまな方法、ツールがあります。今回は YouTube Live に決定しましたが、ほかにも Zoom Webinar や Vimeo Live などを検討しました。 YouTube Live に決定した理由は、

  1. 超低遅延モードがあり、会場と 3 〜 5 秒程度の遅延で配信できる
  2. 全社で G Suite (現 Google Workspace) を使っているため、全員アカウントを持っている
  3. 画質、音質が安定している

これらが決め手で、特に 1 番が大きな理由となりました。

実は 2020 年夏の会でも YouTube Live を使ったのですが、そのときは低遅延モードでおこなっています。低遅延モードでは配信中でも巻き戻せる DVR 機能やより高い解像度での配信が可能となりますが、20 秒 〜 30 秒程度の遅延があり、表彰式の場で受賞者を発表するとき、発表してから 1 分程度待たないと受賞者からコメントをもらえないということがありました。

この課題を解決するためには、超低遅延配信可能な YouTube Live が最適であるとして、これを選択しています。超低遅延モードでは DVR も使えず、 1080/60p が最大の解像度とフレームレートになりますが、必要十分であると見ています。

ちなみに、Vimeo Live はアンケート機能などの双方向のコミュニケーションを生み出す仕組みや、パスワード公開機能も用意されていて魅力的だったのですが、遅延の大きさと値段がネックで選択肢から外れました。もしもリアルタイム性は不要だけど、配信側でアンケートを取りたいとか、URL を知っている人が見られる限定公開以上のセキュリティが欲しければ Vimeo Live も良いかもしれませんね。

どんな機材を使う?

ビデオスイッチャー

複数のカメラや PC の映像を切り替えつつ、必要に応じて PnP (ピクチャーインピクチャー) をおこなったり、クロスディゾルブなどの効果をかけるために使ったのが ATEM Mini Pro ISO です。さらに、 ATEM Mini Pro シリーズは本体だけで YouTube Live へ配信をおこなうための機能を持っています。

よって、 ATEM Mini Pro ISO には LAN ケーブルを接続し、 YouTube Live のストリームキーを設定して本体から配信しています。Streaming High の画質設定で配信しましたが、概ね画質は好評でした。

今回の配信では ISO が持つライブイベント編集機能は必要ないため無印の Pro で OK なのですが、購入時の在庫の関係で ISO を購入しています。それぞれ、入出力端子には以下の機材が接続されています。

  • HDMI in 1 : カメラ 1 (音声 OFF)
  • HDMI in 2 : カメラ 2 (音声 OFF)
  • HDMI in 3 : Google Meet "映像" 用 MacBook Pro (音声 OFF)
  • HDMI in 4 : スライド・ムービー配信 MacBook Pro
  • HDMI out : BlackMagic Design Video Assist 7” 3G
  • USB-C : ATEM 操作用 MacBook Pro
  • Mic in 1 : YAMAHA MG10XUF
  • Mic in 2 : ART HeadAmp 4

特に今回の会では、表彰の場で会場の司会の声を YouTube Live と Google Meet にそれぞれ届けつつ、Google Meet から送られてくる受賞者の声を会場でリアルタイムモニタリングしながら、 YouTube Live 側に映像と音声をミックスして届けるというのが重要な解決したい課題でした。

これを実現するために複雑な構成となり、ATEM の HDMI in 3 には Google Meet の映像だけを乗せ、音声は Mic in 2 に接続した ART HeadAmp 4 から取る形になっています。詳しくは後述します。

カメラ

会場の様子を届けるカメラは SONY FDR-AX60 を 2 台使っています。これに Velbon ULTRA 457 というビデオ三脚を組み合わせて設置しました。35mm 換算 26.8mm から 536mm までの高倍率のビデオカメラなので引いてとるのも寄せてとるのも簡単です。センサーサイズは 1/2.5 なので小さく、暗所には弱いですがその分手ブレ補正が強力に効くのでブレの心配も少なく、誰でも簡単に扱えます。

カメラ自体は 4K/30p 対応ですが、配信用に 1080/60p で設定しています。

誰でも扱えるというのが大切で、実際、カメラオペレーションをおこなったのは財務経理部の方とブランドデザイン室の方です。もしもこれがミラーレス一眼を使って……とかだと、簡単な話にはならなかったと思っています。

マイク

マイクはピンマイクにするか、会場で集音するか議論しましたが、接続の簡便さを取って会場での集音を選びました。まず、各出演者の音は maranz MPM-1000 を 3 本立てて録っています。MPM-1000 は廉価なラージダイアフラム/コンデンサーマイクですが、全社集会のオンライン配信では全く問題ない音質で集音できています。

コンテンツによって出演者は 2 名になったり、 4 名以上になったり、横に広がったりと形を変えるので、ブームマイクスタンドを使ってマイクの向きを変えられるようにしています。マイクスタンドは Amazon で 1 つ 3,000 円程度で購入できる安いものですが、今回の用途では全く十分でした。

また、完全に司会に徹する人向けにもう 1 つマイクを用意しました。永遠の定番、SHURE SM58 です。卓上の小型マイクスタンドに立てていますが、実際に喋るときは口との距離に要注意です。少し遠くなると途端に音が小さくなります。実際の会では司会の人がフリップをカメラに向けるシーンもありましたが、その際にはフリップをマイクよりも前に出してもらうようにお願いしました。

maranz MPM-1000 はコンデンサーマイク、 SHURE SM58 はダイナミックマイクです。マイクとの距離やマイク特性の差を埋めるためにある程度の調整が可能なミキサーが必要となります。

ミキサー / USB オーディオインターフェース / ヘッドホンアンプ

会場のマイクの音は YAMAHA MG10XUF に集約してミキシングしています。コンプレッサーをかけて音の大小を整えつつ、イコライザーを使って音質を調整しています。これ自体に USB オーディオインターフェースとしての機能がありますが、単体のミキサーとして使用しています。

ここで調整した音をミキサーのステレオアウトから出力し、 ATEM の Mic 1 に入力して ATEM 上で映像と合成して配信しています。

さて、上の写真にはもう 1 つ機材が写り込んでいます。これは audient の EVO4 という USB オーディオインターフェースです。この EVO4 は Google Meet "映像" 用 MacBook Pro に接続されています。そして、 EVO4 の入力にはミキサーのモニターアウトから出力された音が入ってきます。

つまり、Google Meet "映像" 用 MacBook Pro は、この EVO4 を Google Meet のマイクとして使うことで、会場のマイクからの音をリアルタイムに Google Meet の先にいる人に届けられるのです。では、 Google Meet の先にいる人の声はどのように YouTube Live の出演者 / 司会者に届けるのか?

それには ART HeadAmp 4 を使いました。

出展 : http://www.electroharmonix.co.jp/art/headamp4.htm

このヘッドホンアンプは 1 入力を、個別の音量調整が可能な 4 出力に分配できます。Google Meet のスピーカー設定を EVO4 にすることで、 Google Meet の先で話している人の声は EVO4 から出力されます。

EVO4 の出力を ART HeadAmp 4 に入力し、 1 つを出演者にインイヤーヘッドホン経由で、 1 つを ATEM の Mic 2 に渡すことで Google Meet の先にいる人が話した言葉が YouTube Live と出演者に届けられます。出演者が増えても残りの出力端子にインイヤーヘッドホンをつなげば OK ですし、必要に応じてさらにイヤホン分配ケーブルを使ってモニターイヤホンを増やせます。

この構成は考え始めた当初は思いついておらず、弊社の CSE (Corporate Solution Engineering) 部のメンバーがこうしたらいけるんじゃないか?とアイデアを出してくれたからこそ実現できたものです。 CSE の名に恥じない、完璧な構成となりました。

映像のモニタリング

ATEM を操作するために各入力に入ってきている映像をモニタリングする必要があります。ATEM Mini Pro シリーズはマルチモニタリング対応なので HDMI out にモニターを接続すれば入っていている映像全てを確認できます。そこに接続したのが BlackMagic Design Video Assist 7” 3G です。

ATEM と同じ BlackMagic Design が発売しているモニターで、これ単体で録画も可能ですし、 LUT を適用して色味を調整することもできます。が、今回は複雑なことは一切なく、 ATEM に入ってきている映像と出力された映像を ATEM をコントロールする人が確認する目的で導入しています。

また、このモニター自体にも HDMI out があるため、この HDMI out からは司会の人がモニタリングできるよう、43 インチの LG 4K モニターに映像を出力しています。

音声のモニタリング

音声のモニタリングは 2 つの目的があります。

  1. YouTube Live に配信される音のモニタリング
  2. 司会者が Google Meet の先にいる人と会話するためのモニタリング

1 番目は簡単で、 BlackMagic Design Video Assist 7” 3G の Audio Out にヘッドホンを接続すれば OK です。ヘッドホンは世界の定番、 SONY MDR-CD900ST を接続しています。基本的にスイッチャーはこのヘッドホンを装着して音を確認しつつ、 BlackMagic Design Video Assist 7” 3G の映像を見てスイッチングオペレーションを実行します。

2 番目に関しても、上述のミキサーの項目で記した通り、ミキサー、USB オーディオインターフェース、ヘッドホンアンプの組み合わせで実現しました。

接続構成図

最終的な構成図は以下の通りです。

これも CSE 部のメンバーがオンラインホワイトボードツールである Miro を使って描いてくれました!

ちなみに、機材は全て Amazon と サウンドハウス で調達しています。今回紹介した機材以外にも長い XLR ケーブルや HDMI ケーブルといったケーブル類、ミニ三脚やマイクスタンドも購入しています。 XLR ケーブルはカナレの L-4E6S を採用したものを選択しています。

気をつけたいところ

ATEM Mini Pro ISO は長時間運用していると、特定の HDMI in が入力を受け付けなくなったり、点滅を始めたりします。これは以前レンタルで使用した無印の ATEM Mini でも同様でした。そのため、前日のリハーサルでは問題がなくても、接続しっぱなしで翌日を迎えたときにトラブルが起きる……ということも経験しています。

そこで、今回は ATEM の下にノートパソコン用のクーラーを設置してみました。結果としてはこれが効いたのか本番では入力がブラックアウトしたり、点滅するようなことはありませんでした。もしも ATEM の入力不安定問題に悩まされている方がいらっしゃいましたら、冷却することを思い出してください。

また、 HDMI ケーブルの長さにも注意が必要です。会場の広さ、ビデオスイッチャーなどの機器との距離にもよりますが、 5m を超えるケーブルを使うと不安定になることがあります。実際、 5m のケーブルを使って接続したら不安定になり、 2m のケーブルでは安定したケースもありました。

最後に

今回はオンライン全社集会における配信機材について少し語ってみました。

Cha 会開催前は「そこまでやる……?」「それ、宮下さんの本業じゃなくない?」なんて言葉がなかったといえば嘘になります。しかし、運営メンバーと、特に CSE 部のメンバーとここまでやったからこそ、最終的には映像面でも音質面でも高いクオリティでの配信を実現できました。

こうしたコンテンツ作り、配信を社員がやるべきか?という疑問点もあると思います。私は社員がやるからこそ面白いと思っています。先に書いた通り Cha 会は普段やり取りが少ないスタッフ同士のコミュニケーションの場でもあるわけです。コンテンツに参加するだけよりも、コンテンツを作り、運営する側もスタッフがやれたほうが、コミュニケーションの幅が広がりますよね。

最後に、何で PM の私がこのような仕事をしたのか?それは、たまたまこういう機材の知識があって、たまたま配信会場である東京オフィス勤務だった……というのもあります。もちろん私がやりたくてやっている (大事) のですが、Cha 会を実現するにあたり、偶然できそうな人間が私だったというのは事実です。

今後も私が続けるべきなのか?というのは悩むところですが、より専門的な知識を持っている人に参画してもらい、こうした Cha 会だけでなく、今後もしばらく続くであろう会社のオンラインイベントの企画・運営をパワーアップさせて欲しいなとも考えています。

と、いうわけで、弊社ではあらゆる職種を募集しているわけですが、こうしたイベントを企画し、機材を選び、実際に配信するところまでワンストップでおこなえるような人 = イベントディレクター職を探しています!

この記事を読んで「おっ、SaaS 企業でおこなう社内外のイベント企画してみたい、運営してみたい、機材で楽しみたい!」と思われた方がいましたら、ぜひともお話を聞きに来てくださいね:)

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